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第四回:

『はい、全ては
仰せのままに……。』の回

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はい。そうですね。ケンですけど。


私の居ない時に、ただならぬことが、起きたとか、起きなかった……とか。
以前であれば、「そうですか〜」って思っちゃってたんですけど。



時は、一週間前に遡ります。

りのんちゃんと、れのが、お二人で『夢』の中でキャッキャウフフしていたその夜……私は、自分のたまホを見つめ、震えておりました。
憧れの王子様・りのんちゃんと素敵な旅を始めて、私のよく知った存在・れのも途中で旅に合流をし……りのんちゃんとれのが仲良くなり(結婚云々はさておいておきまして)、とても、心温まります……これが、人と人とを繋ぐ『縁』ですね……。などと、しみじみと思っていた時です。
 


ハッキリ言いましょう。所持金が、ぜんぜん、ありません!


はい。生活費です。
りのんちゃんは、地球のお金は、持っていません。以前に、りのんちゃんに、「これが地球のお金ですよ。」と、小銭を見せたら、「これなら俺の四次元袋に入ってるマシンで、無限に造れる」等と言い出し……それは、はい、犯罪ですね。地球とりのんちゃんの星とは、金銭の感覚にどうやら違いがあるようなので、この問題は今の私が扱うには少し難しく、早い話、教えることを、先延ばしにしておりました。

れのは……たまに、三人旅をちょこっと離脱しては、どこかから、妙に羽振りが良くなって帰ってきたり、逆に、見る影もなく見た目もズタボロになり「ケツの毛まで毟られたの〜」などと言って無一文になっている時もあり、なんか絶対に……トラブっていますが、あまり聴きたくないので……肉体が無事で帰って来たら、ヨシとすることにいたしました。それと、たまホで毎日おこなっている『かわいい』テーマの配信が、「しゅ〜えき化されたの〜」と喜んでおり、私はその辺りに全く疎いので詳しくは分かりませんが……少しの収入になっているようではありました。しかし、れのが今、具体的にいくら持っているのか、等ということは、いくらなんでも、友人(……と、言って良いでしょうか? まぁ良いですね)なので、知らぬままでした。



実を言うと……私の生活費は、私のたまホに、私の両親が、毎月、遠方からチャージをしてくれておりました。
実家から……旅に出る時に、「最初の内は苦労もあるだろうから、少しで申し訳ないけど……毎月、送ってあげるから使いなさい」と、約束をしてくれていました。
毎月、一定の額面が、たまホに送られてきましたが。私は家を出て早々に、行きずりの女性の家を泊まり歩く……という生活を始めてしまいました。お泊りした女性は、お小遣いをくれることが、なぜか多かったですね。ありがとうございます。犬のケンは、元気ですよ。その甲斐あって(……と、言うのでしょうか? まぁ良いですね)、日銭に困るということは少なく……両親からの送金分は貯金という形になり、結構たくさん、貯まっていたんですよ。
ですので、そのお陰で、りのんちゃん・れの、そして私が、お金が無くて困った……ということは、今までありませんでした。

 
しかし、今は違います。本当に、残高が全然ありません。
最近で言うと、れのが、「池袋へ行きたいの〜!」と言ったので、そこでうっかり、散財してしまいましたね。

「みずいろうさぎの、りのんちゃん〜!可愛いれのと、手を繋いで、池袋を歩けば、映えるの〜!つまり、ビーエル営業をして、フジョシを釣るのよ。ビーエルです〜って嘘ついて、カラオケへでも連れ込めば、りのんちゃんも晴れて童貞喪失なの〜」
「そういう喪失の仕方は、ちょっと。俺、最初は、自分の本当に好きな女性とと決めてるし……」
「クーッ、クソみたいに下らない言葉をペラペラ言ってるの〜!お前は、イケメンいっぱいの漫画に出てくる男子の、プロフィール欄か〜?『めまコス番外編』で、奴隷のケンをガンガンに犯しまくってたソークールな王子様はどこへ行っちゃったの〜? 」
「それは知らん。悪いけど、本当に知らん。それに、雑種の犬を犯すなんて、嫌だね」


りのんちゃん、酷いです……。けど、この下りはもう慣れました。昼間の犬さんの姿でも、最近は段々、愛させてくれるようになったので良いのです。……二ヵ月に一度くらいですけど……。

そういう訳で、池袋へ移動して、爆弾焼きを食べたり(今はもうお店無くなっちゃったみたいですね)、猫カフェで働いている猫さんとお喋りしたり、メイドカフェで働いているメイドさんとお喋りしたり、れのがビーエル本を買い漁ったり、りのんちゃんが着る毛布をニトリで買ったり……と、贅沢の限りを尽くしてしまいました。
なんということでしょう。人を愛するのには、お金も必要なのですね。
愛して差し上げた女性たちが、逆にお金をくれたのは、では、どうしてなのでしょう?
若輩者ですので、よく分かりません、はい。見返りなど要らないと、都度お伝えしているのですが。

ともかく、りのんちゃんと、れのを、本人達のしたいように自由に遊ばせるには、私一人が慎ましく一ヶ月に暮らす金額では、到底、足りません。



この旅を、続けられなくなってしまいます……。
そう思うと、とても恐ろしくて、お楽しみのはずの夜の空も、真っ暗闇に思えて……今まで見えていた満天の星は、見えなくなって。りのんちゃんと、れのが、焚き火を囲んで、お夕飯の釣ったお魚や、りのんちゃんはお菓子を美味しく食べながら、楽しくお喋りしているのに……一人だけ、心が凍り付いたように不安になって。
けど、お金を稼ぐことの恐らく出来ないこの二人に、このことを打ち明けてしまえば……りのんちゃんも、れのも、もう旅を止めよう、と言うでしょう。私が、何げに全部立て替えて来たことを、れのは、知っていてしらばっくれているだけですが、りのんちゃんはまだよく分かっていません(私が常識を教えていないので、私のせいですね)。きっと、ショックを受けて、また泣いてしまうかもしれません。そんなの、私が私を許せません。


けれど……そこでふと、私は思いました。

なぜ……私は、この旅に、そこまで執着しているのか。この旅は、止め時……また以前の一人気ままな生活に戻るだけだ……と、少し前なら、普通に思っていたことでしょう。




かわいい、りのんちゃん。

旅を続けている内に……ニコニコ笑ったり、拗ねたり、ぷんぷん怒ったり、歌を歌ったり……随分、様々な表情を見せてくれるようになりました。
 りのんちゃんは、最初に会った時、『歌』という概念を、分かりませんでした。
「ケン……前から、分からないことがある。ピンクのうさぎの女の子が、音楽に合わせて、節を付けて叫んでいるのは、何なんだ?」
「あぁ……あれは、叫んでいるのではありません。確かに、とても朗々とした歌い方ではありましたが……音楽に乗せて言葉を声に出すことを、『歌う』と言うんですよ」
「それは、なに?」
「嬉しい時や、悲しい時に、『歌』に、自分の心を乗せて、『歌う』んですよ。気が晴れますよ〜」
「ふぅん……。俺には、無理そ」
そう言って、後ろを向いて、あぁ、また耳が……ロップイヤーのうさぎのように、寂しい時の、垂れ耳になってしまいました。
りのんちゃん、自分の感情表現は、マイナス方向は結構できるようになりましたが、プラスの感情を表すのはまだまだ練習中です。
「元気を出してください。まぁ、試しに、一緒に歌ってみましょう。♪ラララ〜犬のケンですよ〜」
「……♪ ラララ〜……犬の……。俺は、ケンじゃないし……」
ぜんぜんでした。この人、歌、歌下手じゃないけど、ノリ悪いかも。いや、それは知っていましたが。けれどきっと今に、もっと心を開いてくれれば、歌さえ上達するでしょう。そう思います。


『夢』の中の、人間の、りのんちゃんもかわいいです。
最初に、りのんちゃんの新しい姿を見た時……あんまり可愛いので、思わず、胸がときめいてしまいました!
私のあげた、深い海の色のスカーフに、共布の大きなリボンを頭に、そして何より、積もった初雪のように白い肌……。お洋服の装飾も、カラフル元気に、キラキラと増えていました。美しい碧とフレッシュグリーンがグラデーションを描く、強い星の煌きの入った、とても大きな瞳。ピュアでクリアな水色の、くしゃくしゃフワフワの髪。
以前の、悪の姿も大好きでしたが……寂しさで常に下がったままのお耳も、プライドだけがギラギラと主張している王冠も……随所に散りばめられた、彼を縛る母星のエンブレムも……全ては彼の寂しさから来るものであり、見ていてとても胸が痛んで、辛いものがありました。
そして彼はその変わった姿のことを、「ケンの、好きそうな姿にした」と、おっしゃいました。くすぐったくって、嬉しいですね……なんて、健気で、かわいらしい、私の、まるで清楚なスズラン。

お友達をたった二日で卒業してしまい、『夢』で彼を抱いた時、そのとてもひんやりした体温に、少し驚きました。
ひんやりしているのは、体温だけではなく……心の温度も、ひんやりちゃんだったのです。
私は、誓いました。この身体を、私が暖めたい。その心も、いつもホカホカ幸せに……させてあげたい。私から溢れる愛を……今まではあるだけ、多方向に振り撒いてきました……けれど、今は、その時ではありません。私の持っている愛の全ては、この人へ注ぎ込みたい。

あの日の『夢』の、ハートの玉座で……れのに、自分からキスをした貴方を見て、初めての強い気持ちが、湧きました。可愛い二人の、百合プレイは、可愛いですね〜微笑ましくなっちゃいます。けれど……りのんちゃん、私には、キスなんてしてくれたことないですよね?りのんちゃんは、私の、恋人なのに……そうでしょう?
胸の中で、ちくり。あれ?この黒い気持ちは?どう見ても、嫉妬です。本当にありがとうございました。自分で分かっているんです。その後れのに、つい、意地悪をしちゃいました。だけど初めて抱いた、『博愛』とは掛け離れた、ドキドキいらいらする、自分勝手な想い。れのとは、結婚するのに、私とは、結婚してくれないのですか? それは、私が雑種の犬だからですか? だったら、れのの秘密を、話しちゃいますよ。れのだって、実は雑種の犬なんですよ! いえ……嘘、嘘、嘘です。れのに、そこまでの意地悪をするつもりはありません。ただ、私の、愛情でいつも満たされた心の、奥に……貴方に、奪われた部分があるようです。

いつも、愛情を、誰にでも無限に注ぐだけで、良いって本気で思っていました。私の愛に、底つきはありません。それは断言できます。けど……欲しいものが、出来ちゃいました。

貴方の心の中に、小さな私を住まわせて欲しいのです。いつも、私のことを気に掛けて欲しい。
私を「好きだ」と言うなら、その欠片を、私に餌として下さい。

どういうエゴでしょうか。自分で、呆れてしまいました。
こんな、真っ黒なのか、それともピンク色なのか、両表の気持ちを抱いたのは、初めてです。
星の王子様に会えたら、とびっきりの愛情を、もう寂しくないように、たくさんたくさんあげよう……と思っていたのに。

今の私は、見返りを欲してしまいます。この気持ちは……独占欲とか、ヤキモチとか、言い方いっぱいありますが……これは、思うに。恋、かも、しれません。もう、片時も、離れたくないんです。

れのからも、随分昔に、言われました。
「この、すっとぼけ奴〜なにが『博愛』か〜?そんな風に飄々と生きるなんて、無価値なの〜。恋の炎に身を焦がされて、のたうち回って狼狽しながら生きましょうよ〜れのは、そんなケンがいたら、やっと魅力的と思うなのなのなの〜」




れの。れののことを、ずっと、誤魔化し続けておりました。

『悪友』……そんな風に、宣っていた頃もありました。けれど、れのの前で、私は嘘を付けません。ずっと。ず〜っと、見透かされていました。「ばか犬〜」なんて、冗談のようによく言って来ましたが、言葉遊びではなく、心の底から、ばか犬と思われていたことを知っていました。
だから、れののことが、嫌だったのです。「『博愛』なんて、洒落臭いの〜」と、よく言いました。私も私で、本当は自分で気が付いていたのかもしれません。
 
限りある筈の、愛情の林檎を、フリーにばら蒔くことに、何の意味があるのか。私はよく、「王子様と再会できた時の、練習です〜」とか言いました。

怖かったのです。周囲の恋をしている人たち、まず、れの、そしてその他の友人知人を見た時に……そして、風の噂で聴く中でも、恋とは、時に我を失ってしまうものだと。無限の愛情を相手に与えられない私に、何の価値があろうか? そこに居るのは、ちっぽけな犬一匹だけではないでしょうか?
最近に、りのんちゃんの提案で、れのと旅を合流して……お久しぶりに再会したれのの、瞳の中の紫陽花が、私を見ていました。

「恋は、イロイロなの〜自分の色だって、変わっちゃうのよ。紫陽花のお花と同じなの。でも、れのはちっとも怖くないの。だって、それがスリル・しょっく・サス……なんとか! 」

ふわふわ紫陽花エプロンドレスの、ながーいリボンを翻して、ドレスには少々不似合いな、逃走用のスニーカーで、れのは軽くステップを決めて見せました。
「うぇ〜い! ピース☆ 」
れのは、痣でボッコボコになって帰る日とかがありました。そういう日は、涙に暮れたり……は、せずに、うさぎさんのニップレスで乳首を隠して裸で自撮りして、配信してました。
「乳首を映しちゃうと、チャンネルがバンされちゃうの〜! けど、れののこのフルボッコにされた姿も、皆の目に焼き付けたいの〜体当たりで生きているのよ〜」
ここまで派手にトラブルを起こしていると、言い分を素直に聴けない側面はありますが……。確かに私は、何かを、自分を、作って生きていて……それは、誰が見ても明らかであり、私だけが、私の正体に気が付いていない……だけでは? と、いつしか気が付きました。

本当の私って、どんなものでしょう? れのの言うように、恋の炎に身を焦がされて、のたうち回って狼狽している私でしょうか。実のところ、私は、いつでも逃げられる準備を、しているだけかもしれません。れのをして、「みんなを好きという人は、全員をどうでもイイという人と同じなの。ケンは冷たいだけなの。……怖いだけなの」とのことでした。図星……かもしれません。逃走用の靴を履いているのは……誰でしょう? 私ですね。


こんな私を、誰より察して、それでも「ケン、大好きなの〜!」と、言ってくれる、れの。
紫陽花のウルウルお目目に、漆黒の睫毛、さらさらツヤツヤな真っ白の肌、お人形さんのように整った目鼻立ち……ショーケースをぶち破って出てきた、ロリータのまさにお人形。『夢』の人の姿では、どりらびクラシックのお姫様のようなエプロンドレスに、可愛さに特化した、雨避けに意味を成さない小さな白い傘。けれどそもそも、れのは、雨に打たれることなど、何とも思っていないのかもしれません。
あの日の『夢』では、れのに嫉妬して、意地悪をしてしまいましたし、その後、りのんちゃんを催眠に陥れた案件で、ご主人様の所へ再調教に送ってしまいましたが……。れのの居ないこの数日、騒がしくなくて、心が平穏で、りのんちゃんと二人きりで……十分ですが、なんだか物足りないですね。


あれっ……これも、何か、おかしいですか?



私は……別の自分の姿に、気が付きつつありました。

たまホのチャージが尽きてしまったのは、このタイミングに、ピッタリだったのかもしれません。私は、自分の気持ちと向き合い、この旅と向き合うべきなのでしょう。




「ケン……あのさ。まだ昼だけどさ。『夢』の……あの」

照れちゃって、もじもじと躊躇しながら、りのんちゃんが言いかけました。

「はい。良いですよ。『夢』に行きましょう。二人で……」

手と手を合わせて、スカイブルーの瞳の星を覗き込むと、フイッと目を逸らされちゃいましたが……顎に指を掛け、こちらへ向かせてキスをしました。そのまま……手を繋いで、日陰の草の上に横になりました。次に目を覚ます時は、『夢』の中ですね。



 ……今日の、『夢』は、やけに雲が覆っていますね。冷たい空気に、肌が晒されて、ヒヤッとします。
『夢』の地面は、無数の、星の砂粒でした。
「今日の『夢』の世界は、俺の星っぽい、『夢』。ケンが居なくて寂しかったから、『夢』が勝手にこんな風になっちゃった」
ブルーの大きなリボンを二つくっつけた、りのんちゃんが背後から現れました。
「貴方の星とは、こんな風に、何も無いところなのですか?」
「ああ。むしろ、地球は、ものがありすぎて、情報量の多さに混乱する」
私を、貴方の星に、招待してくれたのですね……。貴方を今も縛り付ける、過去の世界。

「では、外は寒そうなので、私がお部屋を作ってあげましょう☆ 」
イマジネーションの、扉を開いて……貴方が、もう寒くないように。
「ここは?」
「日本の、お家のお部屋の中に、外から上がる階段です。縁側、というんですよ」
「へぇ……」
りのんちゃんの星に、私の家が建ちました。私の実家には、似せませんでした。もしも……どこかで、貴方と暮らせるのなら、こんなところが良いなぁ……と思ったのです。


縁側に、りのんちゃんを腰掛けさせて、胸元のスカーフを優しく取り払いました。星のヘアピンは……ご自分で、外すんでしたね。

「ケン……ずっと居ないから、寂しかったよ」
「はい。ごめんなさい……」

目元に浮かんだ真珠の涙を親指の腹で拭って、唇を重ねました。
りのんちゃんの方から、舌を絡めてくれました。拙いキスでした。けれど、これより最高のキスを、私は知りません。
「今日は、俺がリードしてやる。覚悟しろ」
可愛らしいことに、真っ赤になったお顔で、そう言われました。
「……お手柔らかに、お願いいたしますね」
思わずヘラヘラしてしまった私に、グーでお腹をボンされてしまいました。

「はぁっ……ん………んっ」
「無理しなくて、いいですよ……」
「……あっ……無理とかじゃ、ない、からっ……」
縁側の廊下に、服を着たままの私を押し倒して、跨ってみたりのんちゃんでしたが……結局のところ私がほぼリードしてあげて、今まさに、準備は整っているのに、思い切りが足りないので挿入できない……という場面です。
「はぁ……はぁっ……」
「お辛そうなので……お手伝いしちゃいますね〜……」
腰骨に手を這わせて、掴んで……一気に、引き下ろす。
「あっ……ああぁん……っ!」
「ほら……全部入りましたよ。分かりますか?」
「……あっ……あああっん……ぁ……」
繋がった部分に、手を取ってりのんちゃんの指を這わせると、また真っ赤になっちゃった。かわいい人。
「こうですよ。動けますか?」
下から、逃れられないよう内股の部分を掴んで、突き上げると、高い嬌声。 
「無理……っ、やっぱ……できないぃ……」



その時。空から、むらさき色の花びらが一枚ヒラヒラと。



「れの、登場なの〜♪」



空から、ピーチ姫みたいな小ちゃな傘に掴まって、ゆらり、ゆらり、と、人の姿のれのがふわふわ舞い下りてきます。
「あぁん☆ なんか、たのちいこと、しちゃってるぅ〜れのも混ぜて欲しいの〜!」
お庭にピタッと着地すると、傘を投げ捨てて靴も脱ぎ散らかして、廊下に入って来ました。

「れの! ご主人様の調教は? 」
「甘めに、終わったの〜! つまりは、禊を果たしたのよ。もう、混じって良いよね? 」

れのは、クズの笑顔を決めて、ペロリと舌を出しました。

「りのんちゃん、難しいことしてるの〜! りのんちゃんに、果たして出来るのかなぁ〜? 」
「れの、やめなさい」
私に跨っているりのんちゃんの、すぐ隣に立ったれのは、可憐なエプロンドレスを自分で捲り上げて……。

「りのんちゃん……オトナのちゅー☆しましょ♪」
「……んんっ……んぐっ……! 」
りのんちゃんのお口に指を差し込み強制的に開かせて、自分のものを突っ込みました。

「んん〜☆ お口の中、トロトロで気持ちイイの〜……ほら、そんな風に、ネコみたいに舐めてるだけじゃイケないの。こうよ」
りのんちゃんの頭を押さえ、腰を使い始めました。
「んっ……んん……」
「あまり、りのんちゃんに苦しい思いさせないで下さいね? じゃあ、私も……」
また下から少しずつ、太腿を抑えて突き上げる動きを繰り返すと、喉奥まで塞がれて潜もった声に、甘さが含まれてきました。

「りのんちゃん、大好きなの二本、咥え込んじゃって、どんな気持ち? ふふっ……。お口も、下のお口も、グチュグチュ言っちゃって、嬉しいの〜? 」
「……んんん……っ! んん……」
りのんちゃん、もう訳分からなくなってるみたい。良いですね。もっと……色んなお顔を見せて。
「んっ……ぷはっ……! あっ、あ、あぁぁっ……! 」

「あれぇ〜触ってもないのに、出しちゃったの〜えっちなの〜じゃあ……れのも……はぁ……っ、えいっ……☆ 」
りのんちゃんの花のかんばせを、れのの精液が汚しました。はぁはぁ、肩で息をして、放心状態になっちゃったりのんちゃん。

私も、いっぱい動かして、中の奥に、注ぎ込みました。
「……いっぱい……ぁつい……」

れのが、りのんちゃんのお顔にペロリと、自分の出した液を、舐め取ってあげました。


今夜も、貴方を愛せて、幸せです。




今までモヤモヤだった空は、小さな星屑で溢れて、地面の覆った星の砂粒は、いつの間にかお花に変わっておりました。




「……で?ケンは、一週間、実家へ帰ってたって訳なの?」
「そ〜です」
書き置き(と、サイン)を傍に置いて、眠っているりのんちゃんとれのからこっそりと音を立てないよう離れ、私は、私の家へ、歩いて帰りました。


そして……久しぶりに顔を見た実家の父と母に、大切なお願い……として、こう言いました。

「どうか、お願いします。毎月の生活費のチャージを……三人分に増やして頂けないでしょうか? 」

はい。ブン殴られました。
父から。グーパンで。当然ですね! 犬の私の、お餅のような顔が、赤く腫れ上がりました。
今までの送金分を、どうしたのか。貯金はしていなかったのか。一人息子の分くらいならいざ知らず、誰が使うのかも話せないもう二人とは、いかなる人物なのか? 激詰めに、されました。二人とも見たことのない顔で、激怒してました。ええ、ええ。当然ですとも。こんなお願いは、常識的に考えて、聴いたこともありません。


宇宙から来たうさぎの、りのんちゃんのことは、話せません。破天荒なれののことは、両親はれのを知っているのもあり、話せません。何も話せないのに、金銭だけを要求する、私は、最低の親不孝者です。他人に愛情を振り撒いて、家族にはこの有り様です。不甲斐ないです。
これまでの爛れた援助交際歴もなし崩し的に話す羽目になり、私は、ボッコボコに殴られて、心身ともにズタズタになりました。でも、本当にズタズタなのは、両親の心なのです……。


でもでもだって……! 私はそれでも、りのんちゃんと、れのと、居たいんです!


土下座をしました。額を擦り付けた、フローリングの感触を、忘れません。
理由は話せない。しかし三人分の生活費が欲しい。家にはもう当分、帰れない……。必死の形相で、泣いて取り縋りました。自分でも、見たことない顔、してたと思います。父は呆れ返り、母はさめざめと泣いていました。これが、愛情過多な私の、成れの果てでしょうか。


でも、良いんです……。私は、ついこの間、りのんちゃんとある約束をしました。

 

「ケン。今から命令するから」
「はい。なんでしょう?何なりと〜♪ 」
「俺の傍に、ずっと居ろ。俺が、楽だな〜と思うこととか、気持ちイイと思うこととか、それだけして、ずっと傍で生きるんだ」
うさぎのりのんちゃんは、いつもの、後ろ手に手を組んだ仁王立ちでしたが、足は震えていたし……瞳の星が揺らぐ程、目に涙を溜めていました。
「はい、全ては、仰せのままに……」
手を取って、指先にキスをすると、りのんちゃんは、またまた大粒の涙をぽろぽろと零しました。
「分かったのか?えっちなこととかも、良くないと、嫌だからな……」
「それはもう。ご奉仕させて頂きます。骨まで溶ける程に」
ぎゅっと抱き締めた貴方の身体は、相変わらずの、ひんやりちゃんでした。私の熱で……溶け合いましょう。


半ば、叩き出される形で、実家からまた、旅立たされました。

しかし……両親からの信頼を失った代わりに、私は、三人分の生活費のチャージをするという約束を、取り付けました。無理がありました。無理を通しました。こんなに胸が痛むことは、今までありませんでした。自分のエゴを通すということは……つらい。
けれど、一週間かかりましたが、りのんちゃんと、れのの元へ、帰れます。
わたしは、スキップしたり、歩いたり、またスキップしたり、しました。


「書き置きの意味が、ぜんぜん分からなかった。ケン、『傍に居る』の約束、早速にして破ったかと……思った」

二人の元へ帰ってきた私を見てりのんちゃん、えぐえぐと、しゃくり上げながら、大泣きしてました……。

「『夢』の鍵を空けておいたのに、『夢』にも現れないし……、ケン、本当は、俺たちのこと嫌いになったんじゃないのか? 」
「ごめんなさい。両親と真剣に話し合いをしていたので、『夢』で同時にイチャコラしていたら、りのんちゃん達にとっても、何か違うかと思いまして……」
誠実さ……なんて、考えたことも、なかったけれど。そうしたら、今度はれのが言いました。


「真剣に話し合いって、何のことなの〜? ただ、荷物を取りに行ったとかではないの? 」
私は……りのんちゃんと、れのに、本当のことを、全て話しました。これを愛情と思い、二人の生活費を立て替えていたこと。そのチャージが尽きたこと。それでも……二人と、どうしても、これからも同じように、一緒に居たかったことを。

「土下座してでも、俺と居たいとは、良い心掛けだな。お金とチャージの意味が未だに分からんが、ケンが教えてくれないからだ。今度、とっくりと聴く」
りのんちゃんは、相変わらずの俺様節でしたが、ニコニコと笑っていました。あぁ、このお顔、好きだなぁ……。

「土下座とか超草生えたわ〜! お父さんとお母さんに、申し訳ないと思わないの〜? ケンは、親不孝者なの! でも、れのの生活費を、代わりに払ってくれるの? タダ飯タダ水、最高なの〜! では〜お言葉に甘えて、当分、お世話になりますなの〜☆ でも〜りのんちゃんの分はともかく、れのにまで施してくれるのはなぜ?んっふふ〜♪ さては、このれのの、魅惑のむちぽよボディに、遂に、恋をしてしまったのね? 」


「はい」
「はいなの〜……。……えっ」


れのは、ばしばしの睫毛をパチパチさせて、キョトン……としました。

「えっ」

りのんちゃんも、呆気に捉えてしまった様子でした。




 「お二人に、『恋』しては、駄目ですか?」




力無い声で、情けなく聴いた私に、りのんちゃんとれのは、両側からギュッ!と抱きつきました。

「そんなの、なんて、なんて……オモロイの〜? それって、最高なの!☆ やっと……れののお願いが叶ったの! 」

「俺のぱわーを持ってすれば、れのと結婚して、ケンとも結婚して、三人で結婚することも、造作無いから、何にも大丈夫」

「あわわ……! 苦しいですよ……! 」




「そうとなれば、れのはもう容赦しないの。ケンを徹底的に振り回してイタズラに傷付けて、かと思えば突然優しくしたりして、メンヘラストーカーケンを爆誕させるわ。れのは、そういうケンを見たくて、ずっと頑張っていたの。『博愛』なんて捨てちゃって、恋にエゴイストなってに、これからを生きるのよ♪ 」

「そうだな〜。れのの言う通り、三人で、仲良くしてるのが一番だから。これまで悪役張ってた俺の言うことかどうか、知らんけど。けど俺の命令は、これまで通り、絶対だ! れのに恋しても、お前を自由に出来るのは、俺だけだからな! 」



はぁ〜。
これって、どうにかなりますかね?どうにもならないって?そうですか。そうですね。

恋を知った私は、愛を失ったのでしょうか。そうでしょうね。今は、いつでも知らない誰かにも、無償の愛を注ごう……とは、思いません。


正直、手一杯で〜す。



「あっ。ケンの瞳!りのんちゃん、見て欲しいの!」
「なになに〜?ケン、細目で、よく見えな……あっ!」
二人して、近いです〜。


「ケンの目の中に、星の、瞬きが……ある!」


えっ。そうですか。
私って、案外、情熱的でしたか?はぁ〜、困りますね。お二人に、心奪われて、ハーレム漫画みたいな日々の、はじまりですね。
ん? これって、ラブコメだったんですか?え?最初からそうだったって?
そうですか。通りで。



「うすのろなケンもようやく戻ったし、今夜は……なにして遊ぶの〜?れのはぁ〜、ゆめかわわ〜でクッションのふっかふかキュートなお部屋で、れのが二人に挟まれてちやほやされる『夢』がいいの〜☆」
「俺は、ケンの好きだって言っていた、日本家屋とかいうセットをまた作ってみたい。後のことは、その時に決める」
りのんちゃん、ナイスですね! 心の成長も見て取れる、良い発言です!
「あぁ〜! また、ケン、りのんちゃんを、贔屓しようとしているの〜!れのも、恋人になったのに〜♪ 」



変わり映えのしない日々は、続いていくようで、げんじつは、くるくるの万華鏡。

「これはお土産の、金平糖ですよ。『夢』で、食べましょうね」
『夢』の世界は、元々はりのんちゃんの、心のシェルター。
だから……いつかは、無くなっていくもの……なのかもしれません。そして、その日は、意外と近くに迫っているのかも。
そんなこと想って、ちょっぴり寂しいです。この私の『夢』の、骨と皮みたいな痩せた姿も、そこそこ気に入っているんですよ。
まぁ実際、私、運動不足なんで、こんなもんじゃないですか?
 
それに、『夢』では、りのんちゃんを抱かせて貰えるし。
な〜んてね。こんな、親しみ溢れる一面を、醸し出してみました!


私も、一匹の、ただの恋する犬なんで。はい。


さぁ今日も、小さなうさぎが一匹と、小さな犬が二匹の、恋のお話が、また一つ。




目覚めたら……皆でお花見にでも、出掛けましょうか。



桜の季節。お二人に、知ってほしい。



呑気な私の、生まれた季節ですよ。







《おわり》